県の観光動向調査、業界団体の報告書、設備の取扱説明書。「読まなければ」と思いながら机に積んであるPDFを、AIに「3行で要約して」と丸投げしたことはないでしょうか。返ってくるのは、間違ってはいないけれど仕事には使えない、無難な3行です。

「3行で」だけでは、AIに捨てる基準が伝わらない

要約とは、短くまとめる作業ではなく「何を捨てるか」を決める作業です。60ページの資料を3行にするなら、ほとんどを捨てることになります。ところが「3行で要約して」だけでは、何を残すべきかの基準がAIに伝わりません。その結果、資料全体をまんべんなく薄めた、誰向けでもない3行が返ってきます。AIの精度が低いのではなく、判断材料を渡していないのです。

図1: 「3行で要約して」だけの頼み方と、3つの指定を足した頼み方の結果の違い

精度を上げる3つの指定

足すのは、①読む人の立場と用途、②絞りたい観点、③根拠の場所、の3つです。たとえば県の観光動向調査を、道の駅の販促会議のために読むなら、こう頼みます。

あなたは道の駅の売場担当者の補佐役です。
添付の観光動向調査を、来月の販促会議で使うために要約してください。

- 「道の駅・直売所での買い物に関係する変化」に絞って3行でまとめる
- 各行の末尾に、根拠となるページ番号か章の名前を( )で添える
- 資料に書いていないことは補わない。該当する記載がなければ「記載なし」と書く

観点を1つに絞ると、「その観点についての記載がない」ことも分かります。読む前に「この資料は今回の会議には関係が薄い」と判断できるのも、立派な収穫です。

根拠ページは原文への「戻り道」になる

3つ目の指定を入れる理由は、3行を鵜呑みにしないためです。根拠のページが添えてあれば、気になった1行だけ原文を開いて、1分で確かめられます。全ページ読む代わりに、確かめる場所をAIに教えてもらう。長い資料との付き合い方が、ここから変わります。

図2: AIの3行から根拠ページをたどり、1分で答え合わせする流れ

明日やれる一歩です。机に積んである読みかけのPDFを1本選び、上のプロンプトの立場・用途・観点の部分を自分の仕事に書き換えて、そのまま貼り付けてみてください。返ってきた3行のうち1行だけ、根拠のページを開いて答え合わせをする。この一往復が、その資料をAIに任せてよいかどうかの判断基準になります。