「動画で紹介できたらいいのは分かっているが、作るのが大変」。そんな声を現場でよく聞きます。そこに関わりのあるニュースです。中国のAI企業MiniMax(ミニマックス)が8月3日、動画生成AI「H3」の中身にあたるモデルデータを、無料でダウンロードできる形で公開したと報じられています。
何が公開されたのか
H3は、文章や写真、音声を渡すと、4〜15秒の短い動画を音声付きで作れるAIです。画質は2Kと高精細。7月末にまずサービスとして発表され、今回はその頭脳にあたるデータそのものが公開されました。公開と同じ日に、他の動画制作ツールがH3を組み込んで使えるようにする対応も始まっています。
ただし、データの大きさは42.5GBあり、動かすには高性能な機材が必要です。「誰でも手元のパソコンですぐ使える」という話ではありません。
小さな店や施設にとっての意味
まずポジティブな面です。SNS用の短い動画や、売り場のモニターで流す映像は、外注すれば数万円単位の出費でした。今回のような「中身の公開」が進むと、動画生成の値段は下がり、普段使っているアプリやサービスに機能として入ってきます。恩恵は、巨大なデータを自分で動かすことではなく、身近なツールが安く便利になるという形で届きます。
一方で注意したいのは、「無料公開=自由に使ってよい」ではないことです。今回の公開には利用条件が付いており、商用利用には売上規模の条件があるほか、米国や欧州などの一部の国・地域では著作権を巡る訴訟を理由に利用が制限されていると報じられています。日本は制限の対象に入っていないとされますが、条件は今後変わる可能性があります。「オープン」「無料」という景気のいい言葉が付くニュースほど、実際に使う前の規約確認とセットで受け取る必要があります。
動画の壁は「作る技術」から「見せる中身」へ
現場目線で考えると、このニュースの本当の意味は「動画を作る技術は、差がつく場所ではなくなっていく」ことだと感じます。技術の壁が下がるほど、差がつくのは「15秒で何を見せるか」です。朝採れ野菜から立つ湯気、雪の下で甘くなった野菜を掘り出す瞬間、直売所に並ぶ生産者の顔。見せたい一瞬を言葉にできるのは、毎日現場にいる人だけです。
もうひとつ、商品そのものは実物の映像や写真で見せ、AI生成の映像は雰囲気づくりの脇役に回すという分担は、動画でも画像と同じく安全な考え方です。実物より美味しそうに「盛られた」映像は、お客様の信頼を削ります。
明日やれる一歩として、「うちの15秒」を3つ、メモに書き出してみてください。「湯気の立つ蒸したての笹団子を割る手元」のように、場面をひとこと文にするだけで十分です。作る手段は後からいくらでも選べます。見せたい場面が先に決まっている店から、この波にうまく乗れます。