クレーム返信こそ、AIに丸投げしてはいけない

問い合わせメールの下書きをAIに頼むのは便利ですが、クレーム対応だけは事情が違います。AIは丁寧な文章を書くのが得意なあまり、こちらの非をまだ確認していない段階で「私どもの管理不足でした」と認めてしまったり、頼んでもいないのに「返金いたします」と補償を約束してしまったりすることがあるからです。

たとえば道の駅の直売所に「買った枝豆が傷んでいた」というメールが届いたとします。本当に傷んでいたのか、保管や持ち帰りの状況はどうだったのか、事実確認はこれから。それなのに下書きが全面謝罪になっていたら、そのまま送るわけにはいきません。

図1: クレーム返信でAIに書かせない3つ——非を認める謝罪・補償の約束・原因の断定

「書かせない」を先に決める安全プロンプト

普通のプロンプトは「書いてほしいこと」を並べますが、クレーム返信では逆です。「書いてはいけないこと」を先に決めておくのが安全プロンプトの考え方です。

以下のクレームメールへの返信の下書きを作ってください。

【守ること】
- 不快な思いをさせたことへのお詫びは書く。ただし、こちらの非を
  認める表現や、原因を断定する表現は書かない
- 返金・交換・補償の約束は書かない。その部分は
  「【要確認:対応内容】」とだけ書く
- 「事実関係を確認のうえ、○日までに改めてご連絡します」と
  期日を入れる
- 言い訳や反論はしない。丁寧に、ただし過剰にへりくだらない

【お客様のメール】
(ここに本文を貼り付け)

【こちらで確認できている事実】
(例:7/26に枝豆の販売記録あり。商品の状態は未確認)

なぜこの書き方が効くか

ポイントは、謝罪を二種類に分けていることです。「不快な思いをさせたこと」へのお詫びは事実確認前でも失礼になりませんが、「非を認める謝罪」は確認が済むまで書けません。この線引きを最初に渡しておくと、AIは下書きの段階で守ってくれます。

もうひとつの効果は、怒りのこもったメールを読んだ直後に、自分でゼロから返信を書かずに済むことです。動揺したまま書くと、言い訳が増えたり逆に謝りすぎたりしがちです。AIの下書きを一度はさむことで、一呼吸おいて冷静に確認する時間が生まれます。

図2: 送信までの流れ——AIの下書きのあと、事実確認・対応の決定・最終チェックの3工程は人がやる

補償や交換をどうするかは、AIではなくお店の判断です。【要確認】の部分を人が埋め、最後に必ず自分の目で読んでから送ってください。

明日やれる一歩

上のプロンプトをそのままコピーして、メモ帳に保存しておきましょう。クレームは来てから型を探すのでは遅く、「来る前に用意しておく」ことがこの型のいちばんの使い方です。過去に対応したクレームメールが残っていれば、それで一度試してみると、自分の返信との違いが実感できます。